税務調査の事前対策-法人税調査

法人税調査

決算日から6~8ヶ月目が税務調査の時期です。
例えば、3 月決算法人なら9 月、10 月、11 月に税務調査を受けます。なお、調査官1人あたり年間30~40 社を調査します。

儲かっている会社や過去に脱税をした会社などには、頻繁に税務調査が入ります。

〔1〕高額:同業者の中で比較的規模の大きい会社 3年に1回
〔2〕悪質:過去に不正(脱税)のあった会社 2年に1回
〔3〕重点業種(不動産、建築、産廃、IT、病院、パチンコ、クラブ) 3年に1回
〔4〕一般法人(過去に不正や大きな修正がない) 5年に1回
〔5〕小規模・業績不振法人 10年に1回
〔6〕重要資料(投書)や資料不突(不一致)のある会社 随時

税務調査のポイントと事前対策は以下のとおりです。

(1) 売上・仕入の期ズレ、棚卸資産の計上もれ

  1. 売上の期ズレ
    決算翌月の売上請求書から、決算月の売上とすべき金額を調査します。
    (例) 3月決算法人。H20.4.10付の売上請求書:3/11~4/10出荷分 2,320,000円
    このうち3/11~3/31分を集計し、3月決算で売上計上されているかどうかを調査します。
    締日以降の売上について、適正に把握する必要があります。
  2. 翌期首出荷分の在庫計上
    決算翌月の売上請求書から、決算日の期末在庫とすべきものが棚卸表に記載されているかどうかを調査します。
    (例) 3月決算法人。H20.4.1付の売上請求書:4/1出荷A商品 1,140,000円
    A商品が決算時の棚卸表に記載されているかどうかを調査します。
    決算月と翌期首月の売上と売上原価の対応関係を確認し、在庫もれがないようにします。
  3. 期末仕入分の在庫計上
    決算月の仕入納品書から、その商品が在庫として棚卸表に記載されているか、在庫でなければ売上計上されているかどうかを調査します。
    (例) 3月決算法人。H20.3.25付の仕入納品書:3/25納品B商品 870,000円
    B商品が決算時の棚卸表に記載されているかどうかを調査します。棚卸表に記載がなければ、3/25~3/31の売上請求書に出荷があるかどうかを調査します。
    決算期末に仕入れたものについては、必ず、売り上げたのか在庫なのかを確認します。

(2) 外注費

外注費は、経費の水増しをする際にもっとも使われやすい項目とされています。決算期末の外注費、見積書や請求書がなく領収書だけしかないもの、仕事内容が曖昧なもの、一見取引先などが調査の対象となります。

決算期末に未払い計上した外注費については、売上との対応関係を明確に説明できるようにしておきます。また見積書や請求書に仕事内容を詳細に明記してもらうようにします。

(3) 人件費

架空の人物が勤務しているように見せかけて、人件費を水増ししていないかを調査します。タイムカード、出勤簿、給与台帳、社会保険などの資料を確認し、不審な人物がいる場合には、社員に聞き取りをしたり、役所に問い合わせをし、その人物が本当に存在し勤務しているかを確認します。

架空人件費は必ず判明しますので、絶対にやってはいけません。また、給与関係の書類を整備しておき、源泉所得税の調査にも対応できるようにしておきます。

(4) 役員給与

役員報酬が定期同額であったかどうかを調査します。使用人兼務役員については使用人給与部分に、役員部分が含まれていないかを検証します。役員賞与は、支給時期・金額が取締役会議事録に記録されているか、事前届出書どおりに支払があったかどうかを調査します。また、経営者の家族に対する役員給与については、金額の妥当性が検証されます。

役員給与については、原則一年間同額とします。賞与を支給する場合には、必ず事前届出書を提出し、事前届出書の記載どおりに支給します。

(5) 修繕費、消耗品費

修繕の内容について、資本的支出として固定資産に計上すべきものがないかを調査します。また、消耗品費として経費処理されているものについても同様の確認がなされます。

単なる修繕なのか、価値が増加したのかを適切に判断する必要があります。また、取引内容を正しく判断することが、節税にも繋がります。

(6) 交際費、福利厚生費、会議費

5,000円基準の交際費について要件を満たしているか、社外の者や役員等特定の者に対する経費を福利厚生費としていないか、会議費について会議の実態があるかなどを調査します。また、個人的な費用が混入していないかについてもチェックします。

5,000円基準の交際費については、氏名の記載など適用要件を満たすようにしておきます。また、誰と何のための食事代なのかなど説明ができるようにしておきます。

(7) 雑収入、雑損失、特別利益、特別損失

勘定科目内訳書でも詳細が求められているとおり、会社にとっても特異な科目です。貸倒損失、固定資産除却損、役員退職金など費用計上の妥当性が検証されます。特に保険金収入などの臨時収入があった場合にチェック項目となります。

貸倒損失とした根拠資料、固定資産の除却を行った証明、役員退職金の支給を決議した議事録など、証拠資料を残しておく必要があります。

(8) 現金

日々の現金出納帳への記載が適正に行われているかを調査します。また、調査当日の現金残高と前日の帳簿残高とを突合し、相違がある場合には、その理由を確認します。

毎日、現金残高と帳簿残高との突合を行い、現金管理を適正に行うようにします。

(9) 仮払金

税務調査で重点的にチェックされる項目の一つです。使途不明金ではないか、会社と個人のお金の区別ができていないのではないか、経理処理がずさんなのではないかなど、いずれも調査官に対しては、否定的な印象を与えます。

日頃から、金額が大きくならないうちに適正に処理をし、残高ゼロとすることが大切です。

(10) 貸付金

返済予定、返済方法、利率などを契約書や議事録で確認し、返済可能な貸付なのか、適正な利率なのかなどを調査します。代表者に対する貸付のほか第三者に対する貸付についても役員賞与の有無を検討します。

必ず金銭消費貸借契約書を締結し、返済が滞った場合は、返済を促し、督促をします。

(11) 役員借入金、仮受金

過去に売上を除外し、ストックしておいたお金を会社に資金導入したのではないかと簿外資金の可能性を調査します。代表者個人の収入との照合により、所得税の申告漏れの調査にも繋がります。また、返済不要な場合は、債務免除益と認定されます。

資金導入の経緯、返済計画書などの関係書類を整備し、導入原資の説明ができるようにしておきます。

(12) 関係会社、オーナー関係者

関係会社やオーナー関係者との取引については、取引内容、取引理由、取引金額が妥当かを調査します。具体的には、業務委託料、決算期の違いによる調整、固定資産の売買、金銭の貸借などについて確認を行います。

第三者と同じ条件、最大でも2倍以内の条件で取引を行うようにし、契約書類等を整備しておきます。

(13) 収入印紙

収入印紙の調査は、税務調査時に必ず行われます。 事前に契約書バインダーに目を通し、収入印紙が貼ってあることを確認しておいて下さい。なお、税務調査の際に発覚しますと、貼るべき印紙の額の3倍を納付しなければなりません。