税務当局のしくみ-強制調査と任意調査
強制調査と任意調査
税務調査は、大きく「強制調査」と「任意調査」に分かれます。
強制調査は、国税局査察部(マルサ)によって、納税者の意思とは関係なく、強制的に行われます。
任意調査は、さらに無予告調査(現況調査)と事前予告調査に分かれますが、いずれも納税者の許可が必要です。
ただし、納税者には受忍義務があるため、税務調査自体を完全に断ることはできません。
- 国税局
- 査察部(マルサ)
- 資料調査課(リョウチョウ)
- 調査部
- 税務署
- 総合調査チーム
- 特別調査班
- 特別調査官
- 一般部門
国税局査察部(マルサ)
マルサは、超大口・悪質事案で犯則嫌疑と犯則行為者の推定がなされる事案を扱います。
マルサは他の税務調査とは全く異なる次のような特徴があります。
- 国税犯則取締法に基づく調査で、犯則嫌疑者を検察官へ告発することを目的とした犯罪捜査であること。
- 査察調査の着手前に、内偵調査等により既に「脱税」の裏が取れている。
- 裁判官より2の事実を元に、令状(臨検・捜索・差押許可状)が出ている。
- 証拠保全のための強制捜査で一切拒否できない。
- 検察官への告発率は約70%で、裁判で有罪判決を受けることが多い。
マルサは、1案件に100人~200人もの調査官が会社、社長の自宅、取引先、銀行などを一斉に立入調査します。
国税局資料調査課(リョウチョウ)
料調(リョウチョウ)は国税局の最新鋭部隊で、料調の調査官は実査官と呼ばれます。
文字通り、資料を基に「選定」と「調査」を行うセクションで、その資料は「仮名預金」の資料から「不正取引」の資料など、広範で中身の濃い大口・悪質事案に関するものです。数ある資料から大きな不正が想定される者をピックアップし、事前に徹底的な下調べ(事前審理という)を行います。
マルサ同様、無予告調査です。ただし、料調は任意調査です。
国税局調査部
国税局調査部は主に資本金1億円以上(首都圏では2億円以上)などの大企業を担当します。
一般の調査官は国税局を「本店」と呼び、国税局に勤務することはステータスになります。
税務署員のうち1度でも国税局に勤務できるのは、全体の30%ほどです。
全国の税務署員のうち優秀な人たちが国税局に配属され、大企業の調査を担当します。
総合調査チーム
各都道府県の大規模税務署が中心となって、中規模企業グループ全体を調査します。オーナー一族の所得税や相続税も調査対象です。
チームは10人程で編成され、調査期間は1ヶ月に及ぶこともあります。
税務署の特別調査班(特調班)
税務署の特調班は「ミニ料調」と呼ばれる精鋭部隊です。
主に規模の大きい現金商売事業者(パチンコ店、飲食業など)を調査対象とします。
一般の調査部門と違って特調班は、事前審理(=準備調査)を入念に実施し、実地調査着手前に「想定不正額」と「その使途や留保先」を把握します。不正が想定されるので無予告調査を行います。
特別国税調査官(特官)
特官は比較的規模の大きい(年間売上10億円以上)納税者を担当します。年齢は50才以上で調査のベテランであると同時に、30~40代の優秀な調査官を従えて通常2人で調査します。
一般部門
税務調査で通常、最も遭遇する確率が高いのは一般部門です。一般部門は統括(課長)の「力量」で調査事績や厳しさが異なります。また、担当者の「実力」差も大きく、一般的には退官間際の上席調査官などは厳しくありません。